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その他の相続紛争

相続人がいないとき,遺産はどうなる?

2017.10.13

相続人がいないとき,遺産はどうなる?

<相談内容>
私が開店資金として100万円を貸していたラーメン店の店主が急死しました。この店主は個人としてラーメン店を経営していて,独身で子どもはおらず,両親は他界していて身寄りがないと聞いています。また,店主は私以外からも借金をしている一方で,両親から受け継いだ不動産を多数所有していたようです。私としては,貸していた100万円を回収したいと考えていますが,どうすればいいでしょうか。

 被相続人が死亡して,相続人がおらず,遺言もない場合,遺産はどのように処理されるでしょうか。今回は,相続人不存在の場合の相続財産というテーマについて福岡の弁護士がご説明していきます。

1 相続人不存在

 今回の事例のように,相続人がいるかどうか不明の場合を法律上「相続人不存在」といいます。相続人となり得るのは,被相続人の配偶者,子や孫などの直系卑属,両親や祖父母などの直系尊属,兄弟姉妹,甥,姪です。
 相談事例では,相談者は店主に身寄りがいないと聞いていますが,本当に相続人がいないか確かめることになるでしょう。そこで,店主が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本,除籍謄本,原戸籍などを取り寄せて,本当に相続人がいないか確認することになります。もし相続人がいるならば,その人が相続放棄をしない限り,貸金返還請求をすることができます。一方で,相続人となる人が誰もいないか,いても全員が相続放棄している場合には,相続人不存在ということになります。

2 相続財産管理制度

 相続人不存在の場合,相続財産管理制度が用いられます。
 まず,利害関係人や検察官が申立てをし,相続財産管理人を選任します。利害関係人には,相続財産債権者,担保権者,受遺者,特別縁故者,相続財産について費用を支出した事務管理者,相続財産を買収しようとする国・地方公共団体・各種公団,被相続人が老人ホームなどで死亡した場合に,その老人ホームを管理する福祉事務所長など,幅広く含まれます。

 申立てにあたっては,①相続の開始,②相続人が明らかでないこと,③相続財産の存在,④申立人の利害関係,⑤管轄を明らかにしなければなりません。そのために提出すべき資料としては,①被相続人の除籍謄本,②被相続人の出生から死亡までの除籍謄本と法定相続人の戸籍謄本,除籍謄本のすべて,相続放棄のケースであれば相続放棄の受理証明書,③相続財産目録,不動産登記簿謄本,通帳や有価証券の写し,④相続債権を裏付ける契約書など,⑤被相続人の住民票除票があります。
 相続財産管理人は,通常は弁護士が選任され,相続財産目録を作成して相続財産を管理(預金の解約・管理や,相続財産の価値維持のための管理費用支出など)することになります。
 そして管理人選任公告後,2カ月経過しても相続人が明らかでない場合,管理人は相続財産の清算に着手します。全ての相続債権者,受遺者に対し,2カ月以上の期間を定め,その期間内に請求を申し出るよう公告します。この期間満了時までに相続人が現れなければ,相続債権者,受遺者に対して弁済をすることになります。

また,相続債権者らに対する請求申出期間が満了すると,6カ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行い,その期間内に相続人が現れなければ相続人の不存在が確定します。こうなってしまうと,たとえ相続人や相続債権者がいたとしても権利行使できなくなるので,注意が必要です。
 その後,3ヶ月以内に請求があれば特別縁故者へ相続財産分与を行います(この制度については,記事を改めてご説明します。)。
弁済手続が終了すると,相続財産管理人は家庭裁判所に結果報告し,報酬付与の審判を受けます。報酬額を相続財産から控除してもなお残余財産がある場合は,国庫に引き継がれます。
 以上の相続財産管理制度の流れを図にすると,このようになります。

被相続人死亡
   ↓
(戸籍上推定相続人なし又は相続放棄)
   ↓
利害関係人又は検察官の請求
   ↓
家庭裁判所 相続財産管理人の選任・公告
   ↓ 2カ月
相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告
   ↓ 2カ月以上
相続人捜索の公告
   ↓ 6カ月以上(相続財産の清算)
相続財産の確定
   ↓ 3ヶ月以内
特別縁故者の請求による財産分与
   ↓
残余財産の国庫帰属

今回の相談事例では,相談者は被相続人の債権者であり,利害関係人に当たるため,相続財産管理人の選任請求ができます。その上で,請求申出の公告期間内に債権の届出をして弁済を受けることになるでしょう。

3 まとめ

 今回は,相続人がいない場合の遺産の処理についてご説明しました。
 相談事例のように,お金を貸していた相手が亡くなり,相続人もいないとなると,相続財産管理人の選任申立てをすることになるでしょう。しかし,この申立てを行うには多数の戸籍などの書類が必要となります。弁護士に依頼すると,必要な戸籍を全て取得することが可能です。ご自身での収集は困難と考えられますので,まずは弁護士に相談しましょう。
 また,ご自身に身内がおらず,相続人がいないという場合もあるでしょう。遺産の使い道は遺言で決めることができます。お世話になった人に贈与したり,団体に寄付することも可能ですので,生前に遺言を作成しておくことをお勧めします。その際,遺言としての要件を備えるよう,弁護士に作成してもらうか,ご自身で作成して弁護士にチェックしてもらうと良いでしょう。

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